唐突で申し訳ないですが、自分はサブカル評論に興味がありまして、去年の春あたりから東浩紀という人の本を読んでいます。その中ではセカイ系とかポストモダンの話とかが結構出てくるわけなんですが、今ずっと進めてるオリバトの「魔虚楽踊」を作る上でも社会とか哲学とか倫理とかその辺りのことを意識してるので、参考になるなぁと読んでたんですね。

でその流れで、去年の11月に一読して結構衝撃を受けたのが宇野常寛という批評家のインタビュー(具体的にはこれこれ)なんです。「ゼロ年代の想像力」という初の評論集を出して話題を集めているみたいなんですが、自分が魔虚楽踊でやろうとしていることの土台部分を綺麗に解き明かしてくれて非常に興味深かったんですよね。

自分はどっちかというと相対主義の文脈だけでぼんやりと考えを深めていってたのですが、宇野さんの場合は相対主義の先にある「決断主義」とそれによる問題性を明確にし、それによって既存の他者との関係性や倫理の在り方まで揺さぶられるだろうという所まで見通してるんですよ。かなり乱暴な解釈でごめんなさい。(汗)それから倫理を重視しているのも、常々中学の頃から「21世紀は倫理の世紀になる」と考え(当時は科学技術の発展による倫理への揺さぶりを意識していたのですが)倫理についてずっと考えて来た自分好みで受け入れやすかったですね。

自分と「魔虚楽踊」の話に絡めてばかりでは普遍性のある話のように見えないんですが、これって今オリバトっていうものにも深く関係がある話じゃないかなと思うんですよ。というのも両方のインタビューでもバトルロワイアルという言葉がちらっと出てきてるんですが、

むしろ、現代の想像力はそういった複数の【エセ】超越性が乱立することで起こる暴力の無限連鎖【バトル・ロワイヤル】や、それらのシステム的な調整【設計主義】みたいなものを扱っていて、僕はそっちのほうにむしろスリリングなもの、怖いものがあると思う。つまり“あえてベタに”自分の信じたいものを信じて“法や社会や倫理を越えた”つもりになっている人たちばかりの【社会】が生む、無機的なダイナミズムですね。

という文章のように、決断主義が広まった社会において必然的に発生する「個人の決断(≒意思)同士の衝突」という現象を比喩的に表すのにバトルロワイアル(=プログラム)を用いているんですよね。でも原作ファンならお分かりの通り、原作の「中味」自体は青春小説としての色合いが非常に強いんですよ。オリバトも原作から受け継がれた青春小説としての文脈が受け継がれていて、プログラムをそういう風な見方で捉える人ってほとんどいなかったんじゃないかと思います。自分もこういう考え方し出したのってせいぜい2007年も後半に入ったあたりぐらいなんで偉そうな口は聞けませんが。

ただこういう切り口を取り入れてオリバトを書くことにより、キャラクター重視・ギミック重視・ストーリー重視のエンターテイメント志向より、更に深みが出て凄く面白くなるし興味深いし意義も普通以上に出てくるだという気がします。そして、それができるのは基本的に作者が1人しかいないオリバトしか無いんですよ。これって前から自分が言ってた「オリバトもテーマが必要」てな主張の更に先にあるものなんでしょうね。何故なら今までの主張だとテーマ選択を選びそこなった場合、オリバトである必然性が無い場合があったんです。例えば「命の大切さと軽さ」をやるなら「別に戦争小説でもいいじゃん」と反論できてしまうという風に。あんまりここら辺突き詰めすぎると「オリバトって存在価値あるの?」みたいな話になってきますから、この問題は解決されるのが望ましいとは思っていたんですよ。

しかし宇野さんが提示した切り口は「個人同士の闘争」であるプログラムを扱う小説=オリバトでしか出来ないことです。あ、これは言いすぎかな。「オリバトで扱うのが最適なものである」ぐらいがいいかな。まぁここら辺に自分はオリバトの存在意義を見出した訳ですよ。正直ここまで来たら1.5次創作どころか1.25次創作なんじゃないかという気はしますけど。(笑)原作の持つ精神性とは180度真逆を行くわけですからね。

このインタビューを読んで大きな収穫だったのが魔虚楽踊で取るべき方針がはっきりしたことです。「相対主義が進んだ社会における個人間闘争」を切り口としてプログラムを通して社会や倫理を重点的に扱いつつ、その過程を多彩なギミックを用いて史上最「大」のエンターテイメント性で彩っていく。これですね。オリバト世代論で表現するなら、原作をなぞることに終始した第1世代の後に、エンターテイメント性を追求して特殊ルール等のギミックに凝った第2世代、そしてテーマや作品の傾向そのものから独自性を発揮した第3世代があって、まだ第2・3世代どちらも突き詰められてないのに、魔虚楽踊は同時にその両方の極地へ行きたがっているという感じでしょうか。ちなみに第2世代がまだ終わってないっていうのは、その極致であろう魔虚楽踊や岸上さんとこの152人バトがまだ完結してないからです。(汗)まぁ案だけ出して終わりってのも悲しいんでね。頑張りますよ。

最後に、なんでこの類の話を今までしてこなかったかというと、ぶっちゃけ魔虚楽踊のネタバレに繋がるのを恐れていたからなんですね。(笑)それにテーマを先に言っても物語書かなきゃ意味ないじゃん!っていうのもありますし。ただ、このインタビューを読んでこういう意識の持ち方は「魔虚楽踊」だけじゃなくてオリバト界全体として持っていてもいいんじゃないかと思ったので今回書いたんです。正直ここがオリバト関係者にどれだけ読まれてるかは分からないですけど。(笑)